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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第36章 1位の彼と私




着替えてカーテンを開ける度、爆豪は「ねぇわ」「ナシ」「きめぇ」「無様過ぎる」「七五三か」と今日もキレッキレのコメントを投下してくる。
七五三か、という感想はおそらく幼児体形に見える、という意味なのだろうが、ではなぜそんなものをてめェは持って来やがったのかと向は問い詰めてやりたくてたまらない。
時間は刻一刻と過ぎていく。
悔しいことに、爆豪の服装は向の目から見ても街中に上手く溶け込んでおり、彼の体型と性格に合ったスタイルに見える。
この少ない時間で、今日と明日、着ていく服を選ぶには、自分で手当たり次第に余計なものを買うより彼に任せておいた方が「ハズレない」ものが選べるかもしれない。


(精神の摩耗がひどいけど…悩み続けるよりはありがたい)


あぁ、カーテンを開けるたび。
にこやかに笑って、私の様子を見ていた女店員さんの顔が蒼白になっていく。
大丈夫です、別にいじめられているわけじゃありません。
彼にとってはこれが自然な言葉遣いのつもりです。
慣れているから大丈夫です。
そういうプレイとかでもなんでもありません。
商品を罵りまくってすみません。
語彙力が残念な子なんですこの子。


「………。」
『……ん?』


そんな謝罪の言葉を無言で女店員に伝えようとアイコンタクトを取っていると、爆豪は腕を組んでじっと向を眺め、「あり」という言葉を口にした。
向と女店員が小さくガッツポーズをした直後、爆豪がまた別の服を向に押し付けてくる。
妥協を許さないのも考えものだな、と向が考えながら服を着替えて、ふと、思い至った。


(……もしかしたら)


案外、私の代わりに決めてくれと彼に頼んだら。
彼は、悪態をつきながらも、私の決めきれない事柄を、簡単に示してくれるのではないだろうか。
例えば、今日のハンバーガーとか。
帰ってから作るつもりの夜ご飯の献立や。
いつも。
彼と向かい合って食べる昼ご飯。


(…ご飯ばっかり)


クスクスと笑いながら、向が着替え終わり、十何着目かわからない試着姿を爆豪に見せた。


『どうかな』
「…………。」

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