第36章 1位の彼と私
『これでも部屋着は多分、クラス1気を使ってると自負してるよ』
「部屋着こそどうだっていいわ、バカか!」
『雑誌とか見て勉強してるし』
「その結果がそれかよ、時間の無駄だからやめろ」
『勉強してんのは部屋着!』
「順番が違えんだよ!」
『外着こそどうだっていいわ!一体誰が私みたいな奴と外で遊んでくれるというのでしょう!?』
「悔い改めろや陰キャ女!!誘われりゃ付き合ってやるわ!!」
『えっ、ほんと』
「嘘だバァァァァァカ」
爆豪の照れ隠しで盛大に傷つけられた向は顔を両手で覆い、ワッと俯いた。
涙の滲んだ目で恨みがましそうに睨みつけてくる向から、爆豪が視線をそらす。
『…こんな格好でクラスメートに会いたくなどありませんでしたよ…でも仕方なくない?だって知り合い見つけたら声かけたくなっちゃうじゃん。自分が今大正時代の苦学生に引けを取らない素朴さ溢れる姿をしてるなんて、いちいち思い起こしたりしないじゃん?』
「………アホか」
『こうしちゃいられない、あと一時間と少ししかない…!早く服買わないとまた数名のクラスメートに酷い感想を持たれてしまう』
残っていたポテトを頬張り始める向を見て、爆豪がストローから口を離した。
「メニュー1つ決められねぇてめェが、決められるわけねぇだろ」
『………………』
「午前中から探してるっつったな。そんなに探して決まってねぇのに一時間そこらで決まるかよ」
『じゃあどうしろと?』
珍しく、切羽詰まった顔を向けてくる向を見て。
爆豪は軽く、ハッと鼻で笑い、ものすごい勢いで食べ進めていたハンバーガーの包み紙をぐしゃりと片手で握りつぶした。
「行くぞ」
爆豪に連れてこられたのは、若者向けの服飾店。
ここにいろ、と指示された試着室の前で、向が煌びやかな店内に気後れしながら棒立ちしていると、何着か服を選んできた爆豪が戻って来た。
「着ろ」
『………えっ、これは…ちょっと可愛いすぎるのでは』
「るっせぇ、口答えすんなナンセンス野郎」
『膝が出るのは……あの…』
「あっ、彼女さんご試着ですか?こちらへどうぞ」
「あァ!?こんなダッセェ女彼女じゃねぇよ!!」
『そんな否定しなくても良くない!?なんかごめん!!!』