第33章 子どもの事情
オールマイトは、そんな2人の顔を交互に見やり、乙女のように口元へ両手首を揃えた後、「青春だな…!」と恥ずかしそうに頬を染めながらコメントをした。
その様子を見ていた爆豪がなお一層暴れ始めるのを見て、オールマイトが彼の口輪を外し、落ち着かせようと褒め称える。
「爆豪少年!!伏線回収見事だったな」
「オールマイトォ…こんな1番…何の価値もねぇんだよ!世間が認めても、俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!」
「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間は、そう多くない」
受けとっとけよ!
「傷」として!
忘れぬよう!
オールマイトは拒絶し続ける爆豪に無理やりメダルを引っ掛け、歓声の沸く会場を振り返った。
「さァ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!!この場の誰にも、ここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後に一言!!皆さんご唱和下さい!!せーーーの」
「「「プルス「プ「おつかれさまでした!!!」……えぇ!?そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!!」」」
そして、全校生徒がしのぎを削り、競い、ぶつかり合った雄英高校体育祭は、幕を閉じた。
教室へと戻った後のHRで、担任の相澤が予告した。
「おつかれっつうことで、明日明後日は休校だ」
プロからの指名等を、休み明けに発表。
それだけを告げた後、HRは早々に解散となった。
「向!…っあー、まだ寒いか?それじゃマックはまた今度だな」
HRが終わった直後。
切島が向の元へと駆け寄ってきた。
『……ごめん………ちょっと早く帰ってお風呂浸かるわ』
「明日!…は、みんな疲れてるだろうから、明後日は?集まって遊ぼうぜ!気晴らしに!」
「みんな!?俺も!?ハブんないの!?やった、じゃあ俺あとでグループトーク作っとくから!」
「おっ、サンキュー上鳴!爆豪も、ムシャクシャしてんなら明後日遊ぼうぜ!」
「あァ!?話しかけんな!!」
「お、今は何言ってもダメだな。あとでメッセで話し合うか!」
そう言って、切島はいつものように爆豪をなだめ始める。