第33章 子どもの事情
「それではこれより!!表彰式に移ります!!」
声高々に宣言したミッドナイトにより、ベスト4まで勝ち上がってきた生徒たちが、迫り上がるステージ中央の表彰台と一緒に現れた。
三位の表彰台には、まるで冬のように厚着をした向と、常闇、二位の表彰台には、ぼんやりとしたままの轟が。
そして、一位の表彰台には、セメントスが急繕いしたコンクリートの柱へとくくりつけられ、口輪を嵌められた爆豪の姿が。
締まんねー1位だな、と誰かが呟く言葉が、ミッドナイトの声によってかき消される。
「メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
私が、メダル我らがヒーロー、持ってオールマイトォ!!ァ!!
なんて、完全ダダ被りの進行を終えたオールマイトとミッドナイトは、表彰台の前へと進み、メダル授与と共に、コメントをしていく。
常闇への賞賛の言葉と、アドバイスを終えたオールマイトは向へと白い歯が眩しい笑顔を向け、メダルを掲げた。
「向少女!おめでとう!君は、攻防に秀でた素晴らしい個性を持ってるな!」
『ありがとうございます』
「寒そうだな!大丈夫か!?」
『寒いです大丈夫です』
「君にも、一つ助言をさせてもらえるならば…君の個性には冷静な演算が不可欠だ。どんな状況でも自分を忘れずに、そうすればもっともっと強靭なヒーローになれるだろう!」
『…ありがとうございます』
さて。
と言葉を切ったオールマイトは、轟の前へと向かい、銀色のメダルを彼の首へとかけた。
「轟少年、おめでとう」
決勝で炎を収めたのには、何か理由が?
オールマイトの問いかけに、轟は穏やかに言葉を返した。
「俺だけが吹っ切れて、それで終わりじゃ駄目だと思った。清算しなきゃならないモノが、まだある」
その言葉の最後で、轟は俯いていた視線を向へと向ける。
向は、ミッドナイトから毛布を返却してもらいながら、轟の視線に気づき、目を合わせた。
「…けど、ひとまず目標ができた。自分よりもまず、救いたい人が出来ました。だから、これからのことは」
ゆっくり、考えます。
そう言って、少しだけ疲れた笑みを浮かべる轟に、向も笑いかけた。