第33章 子どもの事情
(……緑谷……向…!)
爆発を起こしながら飛び込んでくる爆豪を睨みつけ、轟が左半身に炎を灯す。
その姿を見て、爆豪は笑った。
2人の個性がぶつかり合う直前。
轟は、また表情を変え。
俯いて、戦う意志を失った。
爆音と、爆風。
徐々にフィールドから土煙がなくなっていき、地面に倒れこんだままの「勝者」と、場外まで吹き飛ばされた「敗者」の姿がモニターに映し出される。
<<麗日戦で見せた特大火力に、勢いと回転を加えまさに人間榴弾!!轟は緑谷戦での超爆風を撃たなかったようだが、果たして…>>
(ーーーー火ィ、消しやがった)
「……は?」
地面に突っ伏したまま。
氷壁もろとも吹き飛んだ轟を、充血した目で睨みつける爆豪。
痛む腕を酷使し、無理矢理体を起こして、眠ったように気を失っている轟の方へと駆け寄った。
「オイっ…ふっ…ふざけんなよ!!こんなの!!」
こんなの、許さねぇぞ。
そう言おうとした彼の言葉は、ミッドナイトの眠り香によって、最後まで発せられることはなかった。
ミッドナイトは気を失っている2人の顔を見下ろし、(わぁどっちもかんわいい♡)なんて思っていることは会場に伏せたまま、極薄タイツの破れた左腕を天高く振り上げた。
「轟くん場外!!よって……爆豪くんの勝ち!!」
歓声に沸く会場の声を、遠くで確かに聞きながら。
爆豪は、眠りに落ちていく直前。
姿はなく、けれどはっきりと聞こえてきた彼女の声を頭の中で反芻し、思った。
ーーー負けるな、頑張れ!!!
(………なんで)
なんで、あいつに
なんで
俺には、なにも
<<以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝はーーーA組、爆豪勝己!!!!>>