第30章 血も凍るほど熱烈に
頭が割れそうに痛ぇ。
もう膝が震えてる。
身も、心も、何もかもが寒い。
太陽が昇らない世界に立っているみてぇだ。
「…っ…向…諦めろよ、凍死するぞ…!」
白い息を吐いて、長い長いまつ毛が凍ったまま、向は震えながらも俺に戦う姿勢を見せる。
「…そんなに…俺が気にくわねえか…!」
父親のいない向。
親戚の家にいるんなら、母親ともきっとうまくいってねぇんだろう。
どうしてかは知らない。
勝手に想像した。
何か一つを選び取る基準すら持たない俺の隣で、気の遠くなるような長い長い時間を過ごして。
ずっと笑顔で待っていてくれるおまえも、俺と一緒なんじゃないかって。
勝手に切望した。
結局、おしるこなんて一番ハズレそうなジュースを選んだ俺に、『和食が好きだから?』なんて。
楽しげに笑いかけてくるおまえと、分かり合えれば、一緒に過ごせたらって。
勝手に期待した。
俺が選んだジュースを飲んでるおまえを見て。
あぁ、そっか。
きっとおまえがそれを選んだのは、俺と一緒に過ごしたあの時間を思い出したからなんだろうなって。
でも、分かってしまった。
おまえは俺とは違う。
そうおまえの口から語られた言葉を聞いて。
アイツのイラつく言葉を、応援だなんて言うおまえの言葉を聞いて。
ひどく、ひどく、今は裏切られた気分で一杯だ。
「…っ親父の声援…?そんな生易しいもんじゃねぇ、おまえは……知ってんだろ!!!」
『知ってるよ、けど私にはそう聞こえる!!焦凍は知らないからでしょ、本当に恨んでる相手には、人間は煮え湯なんてかけたりしない、本当に道具でしかないのなら、焦凍の名前を呼んだりなんかしない!!』
「……ッ…!?」
『一緒だと、思ってたのに……!』
どうして
どうしてそんな顔で俺を見るんだ
裏切ったのはおまえだろ
「…っ………向」
おまえを避けて、話さなくなってから一日も経たず。
話しかけたくて仕方なかった。
でも、おまえがあまりに強いヒーローになると確信したから。
おまえの隣じゃなくて、上に行かなきゃいけないと思った。