第29章 さいごに囲んだ夕食
<<試合開始からもはや15分!!お互い一歩も引かねぇ!!ついに全力を見せた向と、まだ炎を使わない轟の決着やいかにーー!!!さぁここでイレイザーさんの解説をどうぞ>>
<<………どっちも、冷静さを欠いてるな>>
<<ほうほう……………オーーーイッそれだけかよ!?轟はあんなにエンデヴァーさんから声援受けてんだぞ、おまえも一言二言言ったれ!!!>>
<<おまえ、勝手にバラしといて清々しいまでにうざいな。俺は親でもなんでもねぇよ>>
<<じゃあ親でもなんでもねぇ俺は向を応援します!!頑張れ向、イケメンぶっ倒したれ!!>>
<<私情かつ私怨じゃねえか…>>
(……あいつ、あんなに個性使ってもまだ動いてられるのか)
相澤はフィールドを飛び回る向を見下ろしながら、ふとそんなことを考えた。
(…授業じゃ、ずっとセーブしてたってことか?)
もしそうだとするなら。
雄英も、俺も。
随分とナメられたもんだ。
(………いや、そうじゃない)
自分で考えた仮説を、すぐに否定して。
相澤は思考を走らせた。
普段、向が授業で見せる力が100%だとしても、90%だとしても。
今個性を戦い続けている向の継続時間は、普段手加減をしていたとしても、彼女の力量をとうの昔に越している。
火事場の馬鹿力。
それと似たような、脳のリミッターが外れているんだろう。
(……普段が50%程度しか見せてねぇなら話は別だが、そんなことをするメリットがない)
「焦凍ー!!飛び込んでくる傾向を観察しろーー!!!焦凍ーー!!!左を使えーー!!!」
<<向左だ左ー!!!坊ちゃんなんかにゃ負けんなァ!!>>
(……大方、エンデヴァーの声が耳障りなんだろうな)
親でも、なんでもない。
相澤はそう言った自分の言葉を振り返り、ただ、人知れず。
「……仕方ねえだろ」
と、呟いた。