• テキストサイズ

風向きが変わったら【ヒロアカ】

第29章 さいごに囲んだ夕食




「お!切島、復活はや!?」
「上鳴!今どっち勝ってる!?」


固唾を飲んでフィールドを見守っていた上鳴の隣に、医務室から戻ってきた切島が腰掛けた。


「爆豪!次はぜってぇ俺が勝つ!」
「次もぶっ殺す」
「ケロ…深晴ちゃん普段と様子が違うわよね」
「ん?轟の間違いじゃなくて?」
「轟ちゃんも変なの?」
「いや、変っつーかさ。…なんかヤバイ」
「語彙力の欠如…」
「なんか…マジヤベ!って感じ。マジやっべえぞ!って感じ」


上鳴が芸人の持ちネタを真似しながら表現をするせいで、まったく「ヤバさ」が伝わってこない。


「…あー、何かに例えるなら?」
「なんつーの?ほら、あるじゃんカタカナ4文字で!」
「そりゃあるよ、カタカナ4文字のものなんかいくらでも!」
「デレマスじゃなくて、デレステじゃなくて…」
「え、デレステってなんだ」
「いやあるじゃん!デレステ!」
「知らねえけど。いまどっち勝ってんの?」
「あっ、俺のこと無視した!深晴だったら無視せず俺の話にいつまでだって付き合ってくれるのに!!」
「その向の試合の方が、老化が進んでるおまえの頭よりも重要」
「るっせぇぞモブども黙れや」


誰がモブだ!と爆豪にキレる上鳴と、ウッ!と大袈裟に胸を押さえる切島。
爆豪は歓声の中から聞こえてくる微かな2人の会話を、聴き逃すまいと終始フィールドに食いついたままだ。
派手な氷結攻撃を繰り出す轟と、高速で飛び回る向に視線を落とし。
切島がぽそりと呟いた。


「…あいつらってさ、なんか…主人公とヒロインっぽいよな」
「あ!?どこがだ、てめェの目は節穴か!!」
「いや、おまえも主人公っぽいから安心しろって!でもなんか…すげー複雑」


そして、轟を眺めながらも、ずっと考え込みつづけていた上鳴がようやく「あぁ!」と声をあげた。


「思い出した!なんでそう思ったかっつーと、さっき轟が必死の形相で深晴探してたからなんだけどさ!」
「……ケロ、思い出したの?」
「そう、あの顔見て思った!轟ってさーー」


絶対、ーーーー。
そう言った上鳴をまるで見なかったことにするように、注目していた周りのクラスメートたちがフィールドに視線を戻す。
そして、ヒドッという彼のリアクションすら、見なかったことにされてしまった。

/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp