第28章 凍える熱情
「では、これから委員決めをしていこうと思う!」
高校に入学してすぐのある日。
俺はあれよあれよと言う間に議論が進んで行く教室を眺めて、こんなに中学の連中と違うもんかと少し感心した。
ーーーやっぱ学級委員長は轟だよな!いつも即断即決って感じだし!
中学の頃は黙っててもリーダーに仕立て上げられたもんだが、さすがは雄英。
みんな自己顕示欲の塊みたいな奴らばっかで、「投票」方式なのに自分に1票を入れた。
(…それ、ありなのか)
なんて結果を見て心の中で思ったが、そもそもそこまでして学級委員長になりたいと思わなかった。
「非常口!俺は体育委員がいい!」
「上鳴くん静かに、全ての発言は挙手してからにしてもらおう!」
(…他の委員か。そもそもどんな委員があるのかすら定かじゃねぇ)
恐らく自分が無関心すぎるんだろう。
この委員会は何をする委員会ですなんて基本中の基本、わかって当たり前のように話題が進んで行く。
小学校の委員決めも中学校の委員決めも。
轟は、一番クラスで相応しいから学級委員長に。
そう位置づけられた後は全てがどうでもよくて。
担任が各委員の説明を軽くするのを聞き流して、学級委員長として適当に希望を募った。
自分には必要のない情報だとたかをくくってまともに聞いてこなかったツケが回ってきた。
なんとなく字面で何関連の委員かはわかるが、俺がそんなことを推察しているうちに、挙手制のその委員決めは人気のない委員から確定、人気があった委員はジャンケンで勝敗が決せられ、すぐに終わってしまった。
(……やっぱりって感じだが…あいつ、なんで手、挙げないんだろうな)
最後列からは、クラスの連中の動向がよく見渡せた。
だから俺と同じように微動だにしない向に目が止まった。
(……もしかすると)
俺と、一緒で。
たくさんの候補の中から選べずにいるんじゃないだろうか。
今までの向の様子からそんなことを考えて、俺は壇上で体育委員を奪い合ってジャンケン15回勝負というはた迷惑な勝負を始めた爆豪と、上鳴を眺めた。
どうしてそんな気がしていたのか。
それは、向がぼんやりと。
道端の自動販売機の前で立ち尽くす姿を、見かけたことがあったからだ。