第28章 凍える熱情
「得体が知れなくはねえよ。前おまえに言った通り。片親で、そりが合わなくなったから、高校受験に合わせて転がり込んできた」
「……そんな反抗期真っ只中ってだけの理由で、おまえが自分のテリトリー内に置いてやるわけねぇだろ」
「反抗期なんかじゃねえからだよ」
「アーハン?」
「……反抗期なんて可愛いもんならとっくに追い出してる。あの母親のもとに帰ったら、あいつは」
反抗すら、させてもらえない。
目を細めて、そう言う相澤に、マイクが目を見開いたのと同時。
氷壁のドームから、人影が飛び出してきた。
<<お、おおっとぉようやくバトルが動き出し……ありゃ、吹っ飛ばされたのは轟!?轟だァ!!>>
氷壁を突き破る形で宙に吹き飛んだ轟は、苦悶の表情を浮かべながら、地面に叩きつけられる直前で受け身をとった。
向を中心とした旋風が巻き起こり、球体状になっていた氷壁も、先ほどフィールドを横断した氷壁も。
ガラスが割れ続けているかのような乾いた音を立てながら、バラバラと崩壊していく。
光を反射し、自身の周りに落下していく氷の結晶には目もくれず。
向はただじっと、轟を見据えた。
『……焦凍と、一緒に?なに。なんの話をしてるの?一緒にしないで』
「……っげほ、向……!」
『ははは、なんだか勘違いしてるみたいだねぇ。私は焦凍と違って、コミックの主人公みたいな背景も、自分の個性を忌み嫌うような過去をもってるわけでも、なんでもないよ』
ただ、純粋に。
向は笑って、笑って。
轟に、まだフィールドで破片となって残っていた氷の結晶を個性で操り、遠距離から攻撃を仕掛ける。
「……っ嘘だ」
『ほんとだよ』
「ならなんでそんなに冷静じゃねぇ…緑谷の声が、頭に響いてイラついてるからじゃねぇのか!」
『私は冷静だよ。イラついてることがあるとすれば』
飛来してくる氷の槍を回避し続けていた轟の懐に、向が高速移動で飛び込んできた。
2人の吐息がかかる距離で見つめ合い、それから1秒も経たず。
向は轟に肘鉄を喰らわせながら、囁いた。
『本当の理不尽な戦いっていうのはさ………待っては、くれないんだよ』
衝撃に、視界がブレる。
朦朧とする意識の中で、轟は、ぼんやりと思い出していた。