第26章 モブの隠し事
『理由のない幸運に恵まれ続けて、幸せのままに終わる映画もいいよね』
「…え?おぉ、そんな感じ。伏線か、因果とかいらねぇ。なんのオチもバチもねぇ、ただの平凡な地味な映画」
『平凡な主人公に、平凡なヒロインね』
「地味な結末に、エンドロールも地味」
『エンドロールが地味ってどういうこと?あれ以上の地味さある?』
「全部白。文字も背景も」
『あはは、何それ、何も見えないじゃん』
あいつとの当たり障りない話題。
あいつとの、オチも何もない会話。
どれだけ必死に頭を働かせても、運命を感じる出来事も、劇的な展開も、何一つ思い浮かばない。
恋愛映画で言えば、俺はきっとアレだ。
脇役の中の脇役。
名前もセリフもない、ただのモブ。
<<カァウゥンタァ〜〜〜〜!!>>
爆豪が切島の脇腹を爆破すると同時。
切島が硬化した右フックを爆豪に決め、爆豪が距離を取った。
「効かねーっての、爆発さん太郎があ!!」
<<切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!>>
(ーーーーやってやる、俺が絶対、おまえを!!)
マイクの解説を聞き、勝利を確信した。
「…よっしゃぁ!!!早よ倒れろ!!!」
初めて、女子に何かを奢った。
初めて、女子と2人で寄り道した。
ただの偶然以外のなんでもない。
一緒に帰ってたわけでもないし。
それだけ。
それだけだ。
「……って……!!」
「てめぇ、全身ガチガチに気張り続けてんだろ。その状態で速攻仕掛けてちゃ、いずれどっか綻ぶわ」
左の脇腹への爆破攻撃を受けて、切島の硬化が解け始めるのを見た爆豪が、勝利を確信した笑みを浮かべる。
次いで伸ばされた腕からの爆撃を受けながら、切島はガードするように両腕を顔の前に組んだ。
(ーーーあぁ、どうして)
どうして
俺こんなに、負けたくないんだろ