第24章 おまえと一緒
次第に、目眩がおさまってきた向は、ペットボトルの外側に雫が滴るまで、自身の額にペットボトルを当ててくれていた爆豪の左手を、彼から遠い方の左手で掴んだ。
一瞬だけ、彼の手が震えたのを指先で感じて。
向は視線を合わせることのないまま、爆豪へのお礼を口にした。
『ありがとう。もう大丈夫』
向が爆豪の左手から自身の指先を離し、ペットボトルを抜き取った。
「……オイ」
次第に離れていくその手を見て、爆豪が向の左手首をパシッと掴んだ。
湿ったペットボトルに視線を向けていた向が、肩を触れ合わせたまま。
向の手首を掴んで離さない爆豪の、大きな手へと視線をずらした。
『……なに?』
「なに、じゃねぇだろ」
『………。』
ーーー男性が女性へ、「俺を見ろ」と言っているんだ
(……あのクソメガネ、たまには役に立つじゃねぇか)
騎馬戦開始直前。
向に対して、よく通る声で飯田が説教をしている声は、爆豪の耳に入ってきていた。
『……!』
爆豪の左手に、力が入る。
向は締めつけが強くなった自分の左手首を見つめたまま、爆豪と目を合わせようとはしない。
(……こっち見ろや)
次第にイライラとしてきた爆豪の左手に、彼女の右手が触れた。
ハッとして爆豪も一瞬、視線を落とし。
爆豪の左手を握ってきた彼女の右手の誘導に従うように、向の左手首を解放してやる。
握り直すのかと、爆豪が一瞬期待した。
しかし向はその爆豪の手をひっくり返し、手のひらを広げた後、ポン、とポケットから取り出した何かを握らせてきた。
『ごめん、お金払うの忘れてた。100円で足りる?』
「…………………………」
直後。
先ほどまでの穏やかな雰囲気と一転して、また思いつく限りの罵倒する言葉を並べ立てる爆豪。
向は脇に置いてあった空き缶を指先に挟みながら、攻撃を受け続ける両耳を両手で防御した。
『塞いでいるので聞こえません』
「豆腐の角に頭ぶつけて死ねクソ女!!」
『はぁ?流石に豆腐よりはマシな硬度保ってるし』
「聞こえてんだろ!そのセンスのねぇ飲みもん喉に詰まらせて死ねや!!」