第24章 おまえと一緒
『……見てたよ』
「で?」
『……………で?とは?』
「聞いてんだろ!」
『うん、何を聞いてるのか教えてほしい』
「……っだから……!」
『…あ、バトルの講評?』
「………………」
あぁ、静かになったから、正解か。
彼の表情を確認せず、そう結論づけた向は、呟くように、爆豪にバトルの感想を伝える。
『んー……怪我しなくてよかった』
「あァ!?するわけねぇだろ!!てめェの語彙力はクソか!!」
『不満か……えっとね…じゃあ、ラストの許容オーバーの爆発は腕に響いてないの?』
「そればっかじゃねぇか!!クソ舐めプ女のくせに心配してんじゃねぇよ!!」
『心配はするよ。キミがどれだけ強くても、優秀でも』
勝己に怪我はして欲しくない。
息を吐きながら、静かに言葉を続ける向に、爆豪はグッと口を噤んだ。
『………かっこよかったよ、勝己は戦うたびにセンスが磨かれていくね』
ようやく。
向は、爆豪の聞きたがっていた言葉を返した。
「……ハッ、当たりめェだろ。てめェらモブとは出来が違うんだよ」
『戦ってみたいなぁ』
「ほざいてんじゃねぇ。んな場所でくたばってる奴が俺の相手になるかよ」
『ははは、素直じゃないなぁ。私と戦ってみたいくせに』
「あん?」
『いたたた眼球にペットボトルで圧力を加えるのはやめてください』
「……戦いてぇわけねぇだろ」
『あぁ、そうなの?残念』
「………てめェ、いつもそうやって飄々としやがって。気に食わねぇんだよ」
『そう?私は結構、勝己が好きだよ』
「……」
目を見開いて、向を見つめる爆豪に。
目を閉じたままの彼女は気づくことなく、話し続けた。
『キミが私と一緒に戦ってくれたらなぁって、いつも思うよ』
「今度はてめェが俺の相棒だァ?ざけんな、もっと敷居高く構えるわ」
『勝己が構える事務所ってだけでハードル高いんだからやめておきなよ』
乱暴者なんだから、という意味で発した向の言葉を、畏れ多いんだから、という解釈をした爆豪が、まんざらでもなさそうに将来のヒーロー事務所像について語り始める。
それを聞いていた向は、『爆殺王ってコードネームは法的に引っかかりそう』という的確なアドバイスをして、「なんでだよ!!」と理不尽に怒鳴られた。