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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第23章 今こそ別れめ、いざさらば




「先生、雑用なら俺が!」
「飯田、俺のポイントを稼いでどうする?もっと有用なことに時間を使え」


どれだけ頑張ったって


「爆豪くん、いい加減に俺の名前を覚えるんだ!」
「あ!?興味ねぇよ死ねクソメガネ」


どれだけ努力したって











叶わないものは、たしかにこの世に存在している。











けれど、諦めようとは思わなかった。
諦めたくなどなかった。
ずっと信じて生きてきたのだから。
入学してまだそれほど時間が経っていないのに、諦めるには、まだ早い。


(…よし、では敵情視察をするとしよう!)


僕の目下の関心を引く、相澤先生と爆豪くんのお気に入り。
向くんを観察し始めたのは、USJの出来事が終わってすぐのこと。


「向くん、カレー好きだな!」


そう言って、自分の中で違和感を感じた。
死んだサンマの目を眺めて、数秒。


(…なぜだ?)


向くんはいつも、ほぼほぼ毎日カレーを食べている。
それは一向に構わないし、他人の嗜好に疑問を抱いたりはしない。
僕が不思議に思ったのは、僕と彼女は一度しか一緒に食事を口にしていないはずなのに、彼女がカレーばかり食べている事を覚えていたという事実についてだ。


(……なぜ)


なぜなんだろう。
その疑問は解消されることのないまま、次の日を迎えた。
彼女はその日の昼食に、カレーを頼み、またいつものように爆豪くんと向かい合って食事を摂った。
次の日も、また次の日もそうだった。
たまに怒鳴り散らしているような彼の声が耳に入ると、おそらく一緒に過ごしているであろう彼女が怖がってはいないかと、視線を走らせた。
僕の視界に、怒られても貶されても楽しそうに会話を続ける彼女が映る度。





なんだか酷く、がっかりした。






『なんか、だいぶ蹴り過ぎたよね。天哉意外とタフそうだからやってしまった』
「あの、一本背負。この前の対人戦闘訓練で相澤先生が教えてくれたものだな」
『ん?あぁ、そうだね』
「……先生とそっくりだった。2人は親戚だと聞いたが、普段からトレーニングをしたりしているのか?」
『まさか!普段は接点ないよ』
「…そうなのか?」
『そうだよ!』


そう言って、彼女は『お大事に!』なんて言葉で会話を締めくくり、僕に背を向けた。


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