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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第22章 身を立て名を上げ、やよ励めよ




打撃で、朦朧とする頭に。
会場を盛り上げる為のアナウンスが響く。


<<飯田、倒れたーー!!主審、ミッドナイトが戦闘不能かどうかの審議に入るぜ!!蝶の様に舞い、蜂の様に刺す!なんて恐ろしい可愛い子ちゃんだー!!こりゃイレイザーどころか、観客の視線を釘付けにして離さないわブッ>>


雑に途切れた解説を遠くで聞きながら。
飯田は地面を指先で引っ掻き、無理やり身体を叩き起こした。


「…飯田くん、まだ戦える?」


すぐ近くまで歩いてきていたミッドナイトが、飯田のけがを眺めながら、問いかけた。


「……まだ、大丈夫です…!」


まるで、飯田が立ち上がるのを待っていたかの様に。
飯田が倒れた直後、すぐに場外へと投げ出さなかった向を睨みつける。


「…っここで敗退する俺に、見せ場を作ってくれているつもりか?」
『…そんな偉そうなこと考えてるわけじゃないよ』
「嘘をつくな!俺はもう場外に出されていたっておかしくないほど動きを止めている!…今だってそうだ、先生が戦闘不能のコールをかけるまで猶予があった…君は、どうしてそこまで他人に甘いんだ!?」
『ははは、何十発も蹴られて殴られて、それでも甘いなんて根拠はどこにあるの?』
「君は、俺の大切な友人に似ている…!」


飯田は、血の味のする口で大きく息を吐きながら、深く深く、身構える様に腰を落とした。


「中学三年間、連れ添った友人にそっくりだ。彼は他人にばかり優しくて、自分のことはいつも二の次に考える…そんな、ヒーローの模範とされるべき、俺なんかよりよっぽど優秀な人だった」


けれど。
ヒーローになりたいと言った彼の願いは、叶わなかった。


「…向くん、君は…誰かに、名前を呼んでもらえない。どれだけ言葉を尽くしても、言い様のない空しさを知っているんじゃないか」
『……!』
「……だから、君はクラスのどんなざわめきの中でも、僕の呼びかけに答えてくれるんだろう。クラスメートのどんな暴言でも、自慢でも、無視することをせず言葉を返すんだろう…!」


僕の友人も、そうだった。
飯田は少しだけ苦しそうに咳き込んだあと、向に向かって叫び、駆け出した。





「もっと、自分を認め、賞賛する、周りの視線に執着したらどうなんだ!!?」



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