第22章 身を立て名を上げ、やよ励めよ
「向、ちょっと」
田中くんと良く似た髪型の、恩師とは全く似ても似つかない新しい担任に、僕は戸惑った。
「先生!雑用なら学級委員長である俺がやります!」
相澤先生は、なぜか。
雑用で生徒達に助力を求める時、学級委員長の僕ではなく向くんを呼ぶからだ。
「飯田、雑用好きなのか?」
「好きではありませんが、先生は向くんに雑用を頼み過ぎかと!」
「言うほど頼んでないだろうが…なんでもいい、じゃあ飯田、ちょっと」
「はい!」
正直、中学までとは全く違う担任の対応に、やきもきした。
「普通」、生徒が進んで雑務を手伝うと申し出たならば、それを教師は褒めて然るべき。
しかし相澤先生は一瞬だけ怪訝そうな顔をして、僕を褒めることはしなかった。
「おいクソメガネ、俺の前を歩いてんじゃねぇよ!!」
「ク、クソメガネ!?君、本当に失礼だな!俺は飯田天哉、何度も自己紹介しているだろう!」
「覚える必要なんざねぇだろォが、とっととどけ邪魔だ!!」
「お、非常口!先生とどこ行くん?」
「非常口ではない、飯田天哉だ!」
そして、中学までとは全く違うクラスメートたちの視線に、微かな居心地の悪さを感じた。
ーーー飯田、これ頼むわ!
ーーー飯田くんすごい
ーーー委員長にはやっぱ敵わねえわ
(……気持ち悪い)
あぁ、なんだかとても。
胸がむかむかとして、何かが喉に詰まっている様な。
ただ、与えられる賞賛の言葉の数が減って
担任との特別な距離感が無くなって
ほんの数名のクラスメートたちに
名前を呼んでもらえないだけなのに
「おい深晴、帰んぞ」
けれど。
そんな毎日で君だけは、暴虐な爆豪くんに名前を覚えられ
「向、雑用。あとで職員室まで来い」
君だけは、相澤先生に信頼されていた
どうして?
僕はこんなに、頑張っているのに