第20章 おまえも一緒
吹き飛ばされた二人は空中で体勢を立て直し、地面に激突することなく両足で着地。
「てめェクソ女!!何しやがる!!」
「……」
二人が向にようやく視線を戻した時。
息を切らして、右足だけで立っていた向が限界を迎え、膝から崩れ落ちる。
地面に倒れこむ直前。
誰かの腕が向のお腹を支えたかと思うと、そのままグンッと変わらない体勢で、引き上げられた。
「何やってんだ」
肩に向を担いだ相澤が、包帯に隠れた口元でボソッと呟いた。
『…消太にぃ』
「さすがにまだ腕では持てない。肩で我慢しろ」
ギプスは取れたものの、それとそう変わらない分厚さで包帯を巻かれた相澤の腕が、ポン、と向の背中を軽く叩いた。
「轟、爆豪。早よ飯食いに行け」
「あァ!?…っほっとけよ…!」
「あ?…なんだって?爆豪」
相澤の威圧感に、爆豪がギリッと歯を食いしばる。
無言のままに相澤を見つめていた轟が、不服そうな顔をした。
「……そうします」
不満げな轟の返事を聞き、相澤は特に何もそれ以上二人に言葉をかけることはなく。
リカバリーガールの待つ出張保健所へと歩き始めた。
『…お兄さん、ものすごく目立ってるんだけど、他人のフリは…?』
「やめだ。バカな同期が全国放送のテレビ中継も兼ねてる会場の解説でバラしやがった」
腕が使えたら、殺ってた。
なんてプロヒーローとは思えない言葉を吐く相澤の苛立ちが、彼の纏う雰囲気でひしひしと伝わってくる。
向は両腕と両足を投げ出したまま、されるがままに相澤に運ばれていく。
『私はとりあえず、遠縁の親戚としか言ってないけど。今後もそのスタンスでいいんだよね?』
「あぁ、次何かマイクがバラそうもんならあのモヒカンを根本から引っこ抜く」
『えげつな』
「おまえ、リカバリーガールの治療受けてたら昼飯食う時間なんてねぇからな。あいつらと何してたんだか知らねえが」
『昼抜きか…えげつな…』
気の抜けた声を出す向の腰を押さえる相澤の腕が、ギッとキツくしまった。
ぐ、と呻いた向が身体を起こし、吐息のかかる距離で相澤を睨みつける。
ジトっとした彼の視線を受け、向は、深くため息をついた。
『……はいはい、ちゃんと頑張りますよ』