第20章 おまえも一緒
『…勝己?』
急に轟から引き剥がされた向は、身体を左側に傾けた状態で、背後から現れた爆豪に肩を抱かれた。
「どけや、半分野郎」
「………」
後から現れておいて、不遜な言葉をかけてくる爆豪に、轟はあからさまに顔をしかめた。
視線を爆豪の顔から、向の左足首に移した後、轟がぐいっと向の右腕を掴んだ。
「気安く触ってんじゃねぇクソが!!とっとと失せろ!!」
「向が怪我してんのは左足首だ。支えるなら、俺が立ってる方からにしろ」
「指図してんじゃねェ!!」
『ちょっと、なんで喧嘩腰なの?肩貸してくれてたんだから、そんな言い方しないでよ…いたっ』
「…爆豪、おまえがバカみてぇに向に執着してんのは知ってる。だから別に、肩貸してやるくらいの立場、譲ってやることぐらい大した問題でもねぇが…」
爆豪が、向の腕を掴む轟の腕を叩き落とした。
直前まで向の肩を抱いたままだった右腕を離し、攻撃へと転じた爆豪の乱雑な仕草に、向がふらつく。
左足を地面について、痛みに顔を歪める彼女を見て、轟の眼光が鋭いものへと変わった。
「………おまえに振り回される向が気の毒だ。おまえこそ、とっとと失せろよ」
「……あ?執着してんのはてめェの方だろ、ウロチョロしてんじゃねぇよ!!」
『ちょっと待った!!ストップ!!仲良くしよう、大丈夫私一人で歩けるから!!』
二人の剣幕を見て、焦って自分で歩き出そうとした向が、予想より強く地面を踏みしめてしまう。
カクッと膝から崩れ落ちた向の右腕を轟がサッ!と掴み、左腕を爆豪がガッ!と掴んだ。
睨み合いを続けたまま両腕を離さない二人に、向が捕獲された宇宙人のように連行されていく。
『ねぇ、歩くの早い、かなーちょっとだけ、歩くの早いなぁ!ねぇ聞いてる!?歩くの早いって!!』
次第に、何を競っているのか、歩くスピードをあげていく二人には、向の声など届いていない。
『…この、ガキども』
断続的に片足で跳びながらの移動を強制され、向の右足は悲鳴をあげていく。
『いいっかげんにしなさい!!』
ブチ切れた向が、個性を使い、「反射」で爆豪と轟を弾き飛ばした。