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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第19章 布石に定石




残り時間、約1分。


<<轟、フィールドをサシ仕様にし…そしてあっちゅー間に1000万奪取!!!>>


1000万Pを手にしているチームは、依然として。


<<とか思ってたよ5分前までは!!緑谷なんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている!!>>


前進後退を続け、気づけば5分が経過。
膠着状態の現状に、轟が浅く息を吐いた。


(常に距離をおいて左側に…よく見てやがる。これじゃ最短で凍結させようにも飯田が引っかかる。こう動かれちゃ無闇な凍結は自分の首を絞める)


上鳴の放電も常闇に防がれる一方だ。
乱発のしすぎは上鳴のキャパを超え、機動力のダウンに直結する。


(…残り1分。この野郎…!)


「皆」


指示を出しあぐねている轟を見かね、助け舟を出したのは、轟の指示に迷いなく従っていた前騎馬の飯田だ。


「残り1分弱…この後俺は使えなくなる。頼んだぞ」
「飯田?」
「…大見得切ったのは俺も一緒だ。しっかり掴まっていろ、奪れよ、轟くん!トルクオーバー!」


レシプロバースト!!!


目にも留まらぬ速さで緑谷チームのすぐ横を駆け抜けた飯田の上で、轟が1000万Pのハチマキを奪い取る。
目を丸くした緑谷が振り返り、言葉を失った。


「トルクと回転数を無理矢理上げ、爆発力を生んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメートにはまだ教えてない裏技さ」


<<ライン際の攻防!その果てを制したのは…>>


「言ったろ緑谷くん」


エンジンから燻る黒煙の中。
不敵に笑った飯田が告げる。


「君に、挑戦すると!!」


突っ込んで!!
という緑谷の号令に、常闇が冷静さを失わず反論する。


「上鳴がいる以上攻めでは不利だ!他のPを狙いに行く方が堅実では…」
「ダメだ!Pの散り方を把握出来てない!ここしかない!!」


その言葉を聞き、背後を支えていた麗日と向が顔を見合わせ、常闇を押し出すように駆け出した。


「よっしゃ!取り返そうデクくん!!絶対!!」
「麗日さん、向さん…!?」
『出久!』


歯を食いしばって見つめてくる向の視線を受け、緑谷はグッと拳を握りなおし、前を向き直った。


(僕を信用してくれた…三人の思いを!!僕は今!!)


「あぁああああああ!!!」


背負って、いるんだ。


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