第19章 布石に定石
(だから、飛躍する時には麗日さんの個性で、麗日さん以外を浮かせて、向さんの個性で麗日さんのベクトルを操作、着地地点上空まで移動。着地地点まで到達後、個性を「切り替えて」落下、着地直前に麗日さんの個性でまた僕たちだけを浮かせて、向さんの個性で麗日さんのベクトルを操作、安全に着地。総重量は麗日さん➕衣類分のみ…!)
緑谷が立てた策は、「15分間、1000万pを保持したまま、個性のキャパを超えることなく逃げ切る」ものだ。
個性の使用に多くの集中力と演算を必要とする向の負担を「麗日一人のベクトル操作」「飛躍時、上昇して安全地帯上空へ移動するだけの直線上のベクトル」「着地時、麗日の地面との衝突を避けるためだけのベクトル」に限定。
自身を浮かすのはNGな麗日の負担を「麗日以外の三人」に限定。
着地地点上空で一度麗日の個性を解除する必要があるため、一瞬だけ麗日の両手をフリーにして、緑谷は右半身に重心を寄せなくてはいけないが、そこはうまく向が計算し、飛躍のスピードを緩めてくれることで猶予を作り出している。
<<さ〜まだ2分も経ってねぇが、早くも混戦混戦!!各所でハチマキ奪い合い!!1000万を狙わず2〜4位狙いってのも悪くねぇ!!>>
緑谷チームの着地直後、戦車のような騎馬を組んだ峰田チームが対戦を申し込んできた。
「向さん!」
『あいよー』
緑谷の掛け声に、向は息を軽く吐きながら個性を発動。
上空へと一瞬で飛び上がった直後。
「調子乗ってんじゃねえぞクソが!!」
緑谷チームの左後方。
すぐ近くまで爆風で飛び上がってきた爆豪が、緑谷に向けて右手を振りかぶってきた。
(かっちゃん!!?)
「常闇くんっ!!」
緑谷の掛け声に合わせて、ダークシャドウが盾となって爆豪の爆撃を防いだ。
『ええっ、勝己騎馬は!?』
「るせぇクソバカ女黙れや!!」
ひどいセリフを向に吐きながら、宙に浮かんだままの爆豪を、瀬呂が個性で引き寄せ、騎馬へと着地させる。
<<騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ!?>>
審議を申し立てるマイクの声に、ミッドナイトが親指を立てて「テクニカルなのでオッケー!」なんて判決を下した。