第18章 ずっとかさぶたのまま
「深晴、緑谷と組むん?爆豪とは組まねえの?」
『成り行きでこうなった。電気は騎馬?』
「そう!騎手は轟な!」
僕が策を飯田くんに伝える間、どうやら轟くんと組むらしい上鳴くんと、向さんの会話が所々耳に入ってくる。
「ーー。てか相澤先生……」
『……だよ。……別にーーー』
なぜか二人の会話の中に相澤先生の名前が出てきて、僕は一瞬だけ気が逸れながらも、飯田くんとの交渉を続けた。
僕の策を一通り聞き終わった飯田くんは、一瞬だけ向さんに視線をやった後、また四角いレンズの向こうから僕を見つめた。
「…さすがだ緑谷くん」
その言葉の先に期待した直後。
飯田くんは僕をまっすぐに見つめて、「だがすまない、断る」という言葉で、きっぱりと拒絶した。
「入試の時から…君には負けてばかり。素晴らしい友人だがだからこそ…君についていくだけでは、未熟者のままだ。君をライバルとして見るのは爆豪くんや轟くんだけじゃない」
俺は君に、挑戦する!
そう言い切った後、飯田くんは向さんの前へと歩いて行って、楽しげに彼女と会話を続けていた上鳴くんに断りを入れた。
「向くん」
『ん?天哉はもう組む相手決まってるの?』
「あぁ、轟くんと組む。やはり、君は緑谷くんと組むんだな。ところで障害物競走のスタート時、爆豪くんが君に思いの丈をぶつけていたようだが、結局どうなったんだ?」
『…思いの丈?見てろってやつ?見てろって言う割に、10秒も経たず置いていかれたからほぼ見てないよ』
「そういうことではないと思うぞ。他を蹴散らして駆け上がる俺を見ろ、という意味ではないか?」
『ん?……あー、1位になる俺を下から指くわえて見てろよ、クソモブ女って意味?』
「君、だいぶひねくれてるな!そういうことでもないだろう!男性が女性へ「俺を見ろ」と言っているんだ。独自解釈よりも一般論に鑑みて解釈をするべきだ!」
『ははは、一般論ね…善処するよ。それで、天哉は何を伝えたいの?』
「…君は何故か、入学当初から緑谷くんを気にかけているな。そして、あの爆豪くんには異様なほど気に入られている。対して俺は、障害物競走ではこれといった成績を残していないが、俺からも君に言わせてもらいたい」
『なにを?』
「俺を見ろ!と!」