第18章 ずっとかさぶたのまま
かっちゃんが最高潮にイラつきながら、どうやら彼のお眼鏡にかなったらしい切島くん、瀬呂くんの元へと歩いていく。
僕はそれを大洪水の中から見送り、向さんに向き直った。
「ありがとうありがとう向さん!!本当にいいの!?」
『とんでもー。他2人、一緒に探そっか』
「で、でも…なんで僕と組んでくれる気になったの?かっちゃんに言ったことも全部、向さんが考えてたことと全然違うよね?」
『あぁ、ほんの気まぐれだよ』
「…気まぐれ?」
向さんはいつも通りの、柔らかい笑みを浮かべて僕を見た。
勝ちたい。
そう言った彼女が、ほんの気まぐれで僕を選んでくれたとは思えない。
(…何が彼女の気持ちを動かしたんだろう)
ぼんやりと考えていると、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「デクくん!」
組も、という言葉に僕はまた両目から大量の水分を発射し、周囲に水溜りを発生させながら、近くへと駆け寄ってきてくれた麗日さんに向き直った。
「いっ…良いの!?多分僕1000万故に超狙われるけど…!」
「ガン逃げされたらデクくん勝つじゃん」
「向さんに大見得切っといてあれだけど…それ過信してる気がするよ麗日さん…」
「するさ!何より」
仲良い人とやった方が、良い!
そう言い切って、直視できないほどのうららかな笑顔を浮かべた彼女に、僕は目をぎゅっと閉じ、梅干しを大量に口に含んだような不細工な面を晒した。
「うわあどうしたの!?不細工だよ!!?」
『お茶子一家に一人欲しい』
「深晴ちゃんもわけわからんこと言ってるね!?」
「実は僕も組みたかったんだ、ありがとう!チームを組むなら、なるべくスムーズに意思疎通できる人が望ましいもの!」
「深晴ちゃん、爆豪くんと組まなかったの?意外だね!」
『そう?いやぁ、みんな誘ってくれて嬉しいなぁ』
「あっ、飯田くん!」
僕は探していた最後の一人、飯田くんを見つけて声をかけた。
飯田くんの周りに立っていた轟くん、上鳴くん、八百万さんもなぜか振り返って、僕は三人の視線を一身に浴びながら、飯田くんに策を伝える。