第18章 ずっとかさぶたのまま
「最下位女、とっとと来いや!作戦立てんぞ!!」
それは、事実上の誘い文句。
(あぁ、終わったーーー)
この状況で、自分と組んでくれる人を1から探すのは厳しい。
そもそも「ベクトル変換」を持つ彼女とかっちゃんを敵に回して、最後まで逃げきるのは到底不可能。
勝つために、絶対彼女と組みたいと思っていた僕は、深くため息をついた。
しかも、泣きっ面に蜂とはこのことだ。
向さんと話している僕を見て、かっちゃんが般若のような形相でこちらに早足で駆け寄ってきてしまった。
「てめェデク!!こいつはオレの騎馬だぞ!!」
「ま、まだ組んでなかったみたいだから…声かけただけだよ!」
「あァ!?言わなくたってわかんだろてめェならよ…!いつも人の顔色うかがってるクソナードのくせして、言い訳してんじゃねぇ!!」
図星だ。
僕はかっちゃんが向さんと組みたいと思うことなんて、彼女自身よりもよく分かってた。
『…ごめん』
「……ううん、僕こそ引き止めてごめん。また別の人に声かけてみるよ!」
「てめェに構ってる時間が無駄だ、いくぞ」
『ごめん勝己、私出久と組む』
「「………………は?」」
向さんの言葉を聞いて、僕とかっちゃんは揃って呆けた顔をした。
次の瞬間、見せた表情は2人とも真逆で。
僕の顔からは堪え切れない涙が間欠泉のように噴き出して、かっちゃんの口からは怒りがありありとわかる炎が吹き出した。
「向さぁあああん!!!」
「てめェ深晴!!!ふざけてんのか!!」
『わぁ、芸達者だね2人とも。悪いけど、私5Pしか持ってないから少しでも高いPの人と組みたいのさ。だから勝己ごめん』
「マジでてめェは愉快な国の住人らしいな…?完膚なきまでの1位になるのは俺だ、そのクソナードが持ってる1000万も、俺のPになるに決まってんだろォが!!」
『まだわかんないじゃん。出久は予選で勝己より上だし』
「………っ!!!」
ブチィ!!と、かっちゃんの中で何かがブチ切れる音がした。
「勝手にしろ!!てめェは贔屓してるそいつと並んでここで敗退だ!!!」