第3章 何事もほどほどに
「最下位除籍って…!入学初日ですよ!?理不尽すぎる!」
グラウンドに集められた1- Aの生徒達に告げられたのは、相澤が教室で予告していた「個性把握テスト」の内容と、もう一つ。
テスト結果が最下位の者はこのクラスから除籍させられてしまうという、あまりにも重すぎるペナルティの存在を知らされ、緑谷は、自分の指先から徐々に血の気が失われていくのを感じていた。
「自然災害、大事故…身勝手なヴィラン達…いつどこから来るかわからない厄災、日本は理不尽にまみれてる」
そういう理不尽を、覆していくのがヒーロー。
相澤は、不満を訴えた麗日に対し、彼女が使った「理不尽」という言葉を用いて、これから行われるテストとその結果に準じ与えられる処遇を甘んじて受け入れる必要性を説いた。
「さて、デモンストレーションは終わり」
相澤は、かきあげていた前髪を下ろし、また言葉を続けた。
担任の号令を受け、1- Aのメンバー達の間に一瞬、緊張感が走る。
入学初日に思い知らされる、競争社会の基本原理。
放課後マックで談笑したり、クラスメートからカラオケに誘われたりしてみたいなんて思っていた向は、それを見透かしたかのような冷ややかな視線を送ってくる相澤から、何食わぬ顔で目をそらす。
(………?)
視線をそらした先で、真っ青な顔をしている緑谷に気づいた。
向は一瞬だけ、考え、そして自分の良心に従い、行動してみることにした。