• テキストサイズ

風向きが変わったら【ヒロアカ】

第2章 あっち向いてホイが得意な人




「あ、じゃあ…」
「うん!グラウンドでね!」


元気よく返事を返してくれた麗日は、女子更衣室に入っていった。


『出久』


女子に名前を呼ばれることなんて、向との出会い頭に呼ばれた一回を除けば、緑谷の中では幼稚園以来の出来事だ。
そのむず痒い感覚に不覚にもキュンとしてしまってから、自分がまだ返事を返さずに向を凝視してしまっていたことに気づいた。


「…………あっ、ハイ!?」
『怪我しないようにね、お互い』
「う、うん…ありがとう」


じゃあ、また。
向は緑谷に爽やかな笑みを向けた後、背を見せて女子更衣室に入っていった。
まだ少し緊張したままの身体で深く息を吸い込む。
ふと下を向くと、更衣室の出入り口から少し離れたところに寝袋で転がっていたはずの相澤が、緑谷のすぐ足下に移動して見上げてくる姿が視界に入った。
充血した相澤の目と、一瞬緑谷の目が合って。
その慣れない衝撃に、緑谷は身体が跳び上がるほど驚いた。



「わぁ!?」
「緑谷、ときめいてないで早く着替えろ」
「とっ、ときめいてませっ!?」


あからさまに動揺しまくりの初々しい男子高校生を寝袋の中から見上げて、相澤は呆れ、ため息をついた。


「……緑谷」
「はいっ、すいませんすぐ着替えます!」
「ああいう女は、一番厄介なタイプだからやめとけ」
「…へ?」


悪いこと言わないから、と。
相澤は手でシッシッと緑谷を更衣室に追いやる仕草をする。
まさか相澤が授業以外のことで話しかけてくるようなタイプだとは思ってもみなかった緑谷は、少し面食らった。
なんと返していいか分からず、とりあえずその忠告に、コクリと深く頷いておくことにした。





/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp