第15章 ただいま
深晴は、少しだけ俺を見上げて、伺うような視線を向けてきた。
俺は出来る限り、自然な笑みを浮かべて。
彼女に言った。
「…そういうもんだよ」
深晴は、すごくすごく嬉しそうに笑って。
その笑顔は、今まで見たことがないほどに可愛くて。
俺は直視できなくなって、おもむろにアイスの袋を開けた。
「つめっ、た!」
「ははは、アイスだからなー」
「…ハッ、そうだ切島、お前には後で、アイスごときで許されない大罪人としての罰を受けさせてやるからな!!」
「えっ、なんのことだよ。アシストしてやったろ!」
「なにがアシストだ、妨害行為じゃねぇか!!」
「は!?」
「通学路のオープンカフェ!深晴を誘ってみたんですけど?どうやらもう一度行ったみたいなんですけど?どなたと行かれたかは存じあげませんが!!」
「オープンカフェ?…………あ」
「この裏切り者ー!!」
「深晴」
やっぱり少し寄越せ、と。
爆豪が深晴の持つアイスに噛み付いた。
呆然とする俺と切島なんて、まるで視界に入っていないかのように、二人は会話を続ける。
『お腹一杯じゃなかったの?』
「見てたら食いたくなった」
『言ってくれれば渡すのに』
「手ェベトベトすんだろ。てめェ持ってろ」
『えぇー』
まるで、恋人同士のように、一つのアイスを俺の目の前で食べ続ける二人。
アイスの棒を持つ深晴の手に、爆豪が「食べにくい」なんて理由で、自分の手を重ねた。
「切島…爆豪…」
俺は、出来る限り穏便に。
「ん?」
可能な限り、寛大に。
「…あ?」
けれど、言葉を選んではっきりと。
「テメェらなんか、友達じゃねぇーーーーーーーーーーーーー!!!」
絶対に許してやるもんか!!!
泣きそうになりながら叫ぶ俺を見て、深晴は何が面白いのか、また楽しそうに、嬉しそうに。
陰りのない笑みを浮かべて。
幸せそうに、笑っていた。