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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第15章 ただいま




「もうさー、俺自信無くすわ。お前の周りにいる男子手強すぎ。やる前からムリなのわかりきってるっつーかさー」


食器を返却台に片付けながら、上鳴がそんな愚痴を漏らした。
飯田と麗日は空いてきた食堂に残り、説教タイムを終えてから教室に戻るというので、向と上鳴は、先に食堂を後にした。
『何で怒られてるの?』と向は飯田に聞いてみたものの、「魚の骨はさほど今重要ではなかったようだ」という先ほどの議題提出者とは思えない回答を受け、ただ困惑するだけに終わった。


「なぁ深晴、そういえばさっき俺になんか言いかけてなかった?」
『…さっき?』
「ゴメンゴメン、さっき聞き返してやればよかったんだけど…座席に着く前さ、「あのさ」って俺に言ったじゃん?あれ、なに?」


その時のことを覚えていたのかと、向は少し、上鳴に感心した。
聞こうとしていた内容が内容だった為、向はその時のことをすぐに思い出し、言葉を返した。


『なんか、脈絡もなにもなくて申し訳ないんだけど』
「なになに?」


軽い口調で、明るい笑みを浮かべたまま見下ろしてくる上鳴。
話しやすい人だなぁ、なんて、少しまた、向の上鳴に対する好感度が高まった。


『…なんで、いつも昼食誘ってくれるの?』
「なんでって、ご飯行きたいからじゃん」
『…一緒に?』
「えっ、あっ、そういう質問?あー、んーっと…そ…そう、一緒に」


上鳴は少し視線を宙へ泳がせて、恥ずかしそうに頬を指で擦った。


『…友達、だから?』
「…ん?」


視線を向へと戻した上鳴は、少し考えにふけった後、言葉を発した。


「深晴、今日元気無くね?ずっと」
『…んー、なんだか疲れてて』


(…あ。期待してた答えじゃなかったパターンか)


向は一瞬、残念そうな顔をした。
その彼女の横顔を見た上鳴は、必死に頭を働かせた後、一つの正解を思いつき、向の前に進み出る。


「友達だからだよ!」
『……。』
「友達だろ?俺ら。友達だから昼メシ誘ってんの」
『……友達』
「そ、そう友達…」
『なんで少し嫌そうなの?』
「嫌なわけ!」


精一杯、見栄を張る。
すると、向は少しだけ疲れた顔を見せて、またすぐに笑ってみせた。

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