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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第15章 ただいま




言葉の最後を疑問形で終わらせた向が、じっと飯田を見つめた。
飯田は背筋を伸ばしたお手本のような姿勢で食事を続けていたが、その視線に気づき、わざわざ箸を置いて、問いかけてきた。


「どうした、向くん。昼休みが終わってしまうぞ」
『…天哉と昼ご飯食べたのってさ、戦闘訓練の授業があった日だけだよね?』
「あぁ、そうだが、どうかしたのか?」
『…ううん、別に何も』
「深晴ちゃん」
『ん?』


そういうことだよ、と麗日が目を輝かせながら、向にヒントを与えた。
向は福神漬けの食感を口でぽりぽりと楽しみながら、『…へー?』と恐らくは合点がいっていないであろう曖昧な返事を返した。


『まぁいっか』
「よくない!よくないよぉお、飯田くんもっと頑張って!!」
「ムッ!俺よりも向くんの方が食べ進めていないように見えるが…」


向くん、一緒に真剣に食べよう!なんて飯田が言うせいで、向も、心得た!なんて返事を返し、無言の構えで昼食に向き合い始めてしまった。


久しぶりに、向と飯田が一緒に昼食を食べている。


なのに、脇目も振らず目の前の食事だけに視線を向ける飯田に、麗日がやきもきとした表情を浮かべる。
その様子を見て、上鳴がコソッと麗日に耳打ちした。


「えっ、葉隠が言ってることってマジなん!?」
「マジだよ、おおマジだよ!!」
「嘘だろオイ、委員長がそんな肉食なんて聞いてねぇって!」
「いや…肉食ではないかも、だってもう飯田くん、ここ数分目の前のサンマしか見えてないよ、せっかく隣に深晴ちゃんいるのに!サンマばっかり!」


もうッ!サンマの骨なんてどうでもいいから!!
なんてシャウトしてくる麗日に、飯田が驚き、ビクッと体を震わせた。
喉に魚の骨が刺さる危険性についてという議題を飯田が持ち出したところで、向は『ごちそうさまー』と両手を合わせた。
「「食べ終わっちゃった!!」」なんて頭を抱えて仰け反る麗日と上鳴を眺めて、向は楽しそうにカラカラと笑った。


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