第15章 ただいま
向がカレーを頼むと、上鳴は「お前カレー好きなー」と笑いかけてきた。
どう返事をしようか迷っていると、近くの座席に座っていた飯田がビシッと天高く片手を挙げた。
「二人とも!ここ、二人分空いてるぞ!」
「あっ、深晴ちゃんだ!上鳴くんもどうぞー!」
気を利かせてくれたらしい飯田と麗日が、うららかな笑顔を浮かべながらこちらにブンブンと手を振ってくる。
「委員長許さねぇ…」
『…?…行かないの?』
「いや、行くっしょ。あんだけ邪気のカケラもない笑顔で手招きされたら…!」
畜生ー!!と危うくお盆をひっくり返しそうになるほど、上鳴は頭を振り下ろして俯いた。
「爆豪のいない今日がチャンスなのに…!」
『チャンス?…あのさ』
「深晴!」
『あっ、ハイ』
深刻そうな面持ちで向を見つめる上鳴。
向はその視線を受けて、何かを言おうとしていた言葉を喉の奥へと引っ込めてしまった。
「俺と、今度サシでメシ行ってください」
『…サシでメシ?』
「二人で!いや、ハードル高いなら別のやつ入れてもいいけど、二人で遊びに行こ?いやいや、遊びにっていうとなんかアレだから…ほら!学校のすぐ近くにさ、オープンカフェあるじゃん?店員さんが緑のエプロンしてる…」
『…あ、二つ信号渡ったところ?』
「そうそう!そこ、えーっと、フレッシュジュース美味いんだよ!おススメだから、今度一緒に行こう!」
『そこ、鋭児郎と行ったんだけど、すごく美味しいよね。グレープフルーツも、オレンジも』
「がんばれよ☆」と言わんばかりだった切島のドヤ顔が、上鳴の頭に思い浮かぶ。
ナイスパスをよこしてきたはずの友人を「切島コロス」と罵りながら、上鳴が麗日の隣の座席に腰を下ろした。
復讐者の目をしているぞ、大丈夫か!?と上鳴を心配する飯田の隣に、向が腰掛けた。
「わっはー、なんか深晴ちゃんと食べるの久しぶりだね!」
『ねー。あれ?出久は?』
「オールマイト先生に呼ばれている。向くん、カレー好きだな!」
『あー、好きっていうか馴染み深いというか…ん?』