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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第15章 ただいま




「深晴ー、メシ行かね?」
『…あっ、うん。行く』


昼休み。
なんだか落ち着かずにいた向に、いつものように上鳴が声をかけた。
鞄から財布を取り出して顔を上げると、そこにいるはずの人が一人、欠けていた。


『…あれ』
「ん?今日は爆豪一緒に食べねーっぽいな」


行くぞ、という命令口調でいつも昼ご飯に誘ってくるはずの爆豪が、今日はもう出入り口の方へと向かっている。


「あれ?向、爆豪と喧嘩でもした?」


その彼を見送った切島が向のもとへと歩いてきた。
向は特に思い当たることがなく、首を横に二回振った。


「そういう気分なんじゃね?」
「そっか。じゃあ、あいつが一人で食べんのもアレだから、俺は爆豪と食べるわ!上鳴、今度お菓子奢れよ!」
「は?ちょい待ち、なんで俺が………」


ハッ。
と身体を震わせるほどの重大な事実に気づいたらしい上鳴が、じっと向を見つめた。


『…電気も、私と食べたくない?』
「えっ、んなわけないじゃん!寧ろ学食だけじゃなくて朝も夜も一緒に食べたい所存です俺は!!」
『なんか変な喋り方になってるね』


ははは、ありがと〜。
そんなコメントで口説き文句をかわしてしまった向は、少しだけ嬉しそうな笑顔を浮かべながら、歩き始めた。


(…っ切島ナイス…!あとで好きな菓子買ってやるからな…!)


向と、二人きり。
上鳴はそんな状況にホクホクと胸を膨らませながら、学食へと向かった。


「…あ、つーかさ、深晴。さっきの私と食べたくない?ってどういう意味」
『…あぁ、勝己は今日、私と食べたくないんだろうから』
「そうなん?」
『多分』
「なんで?」
『…ライバル視ってやつじゃない?知らないけど』
「へー、ライバルねー」
『…電気は、特にそういう目してないね』
「ハハ、そういう目ってどんな目だよ。同じクラスメートすら敵視してたら疲れね?俺そーゆうのマジムリだわ」


マジ疲れる。
そんな怠惰な発言を口にしつつも、彼はにこやかに、きちんと向へ返事を返す。


『…私もそう思う』
「だろ?みんな意識高すぎんだよ」

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