第15章 ただいま
敵襲撃を受け、臨時休校となった翌日。
退院してきた相澤と一緒に、プレゼント・マイクが相澤の自宅へ押しかけてきた。
「グッモーニン向!昨日ぶりだな!」
『プレゼント・マイク…!』
あれだけ昨日会話を交わし、彼女が所持していたプレゼント・マイクのラジオCDにサインを書いてあげたにも関わらず、向はわなわなと手を震わせて口元を押さえた。
新鮮な反応ナイス!!と適当なコメントをしながら、めんどくさそうな顔をした相澤よりも先に靴を脱ぎ、マイクがリビングへと入って行った。
『お、おかえりなさい…あの、ごめん』
「…話したのは俺だ。それより、靴が脱ぎにくい」
『あっ、はい』
向に手伝ってもらいながら、靴を脱いだ相澤がリビングへと入って行ったマイクを追いかける。
でろぉんとリビングに早々と寝っ転がり、テレビの電源を入れるマイクを眺め、相澤は時間の無駄としか言いようのない質問を問いかけた。
「…ここはお前の家か何かか?」
「なぁに行ってんだ、お前の家だろ!」
「そうとは理解し難い態度だから聞いてんだ」
健在の足でガッ!と雑にマイクを蹴る相澤。
暴力反対!とハイトーンで叫びながら、ソファから跳び起きたマイクの視界に、ローテーブルに畳んで置いてあった黒い衣服が映った。
『あ、それ…昨日マイク先生が帰った後に繕い直したんです。タンクトップ買っては来たけど、袖口が狭かったので』
マイクが両腕ギプスの相澤を眺め、おぉ!と感嘆の声をあげる。
『…ところで、なぜマイク先生がこちらに』
「退院する同期を車で拾ってきたわけよ」
それと!同期特典がもう一つ!
とマイクが指を立て、ダラララララッダン!と自分の口でドラムロールの真似をした。
「お背中流してあげるぜ!イレイザーヘッド!」
「深晴、蒸しタオルで背中拭いてくれ」
「おぉっと無視か!?イレイザーお前、うら若きJKに親類縁者とはいえ清拭させる気か!?」
「…うるさい、とっとと帰れ」
「いいのかなぁ、あんだけの乱闘騒ぎの後、大して着替えもシャワーにも入らないまま三十路のおっさんがJKの半径1m以内に近づいて!!」
「…」
相澤がミイラ状態の自身の両腕を見て、舌打ちをした。
そして、仲よさげな二人を見て笑いかけてくる向を見下ろし、渋々頷いた。