第14章 大好きなヒーロー
病室で目を覚まして、ベッドの脇に座る人の気配に気づいた。
身体を起こそうとしても、まだ気力も湧かず、身体が言うことをきかない。
「…起きたか、イレイザー」
特徴的な声と、姿に、その人物が誰かを理解した。
彼に似合わない深刻そうな面持ちを向けてくる同期に、言葉を返す。
「………生徒は」
「みんな無事だ。自分でコケて階段すっ転んだ奴が1人と、自分の個性で足粉砕骨折した緑谷くらいだな」
「………」
そうか、とだけ返事を返し、深く息を吐く。
お疲れさん、大変だったな。と、軽い言葉を重いトーンでかけてくる同期に、全くだよ、と言い返してやりたくなる。
けれど。
睨みつけた視線の先で、何か言いたげに口を開いている彼を見て、言い返すのをやめた。
「……なぁ、さっき、お前の生徒が来てよ」
「……誰が」
「…カワイ子ちゃんだ。向深晴」
「……」
「……お前の容態聞いて、荷物置いた後帰ってった。先生が起きたら渡してくださいって言ってたんだけどよ…なんか…勘が働いて、見なきゃいけねぇ気がして、荷物開けちまったんだよな」
「……それで?」
同期は、言いづらそうに視線を泳がせた後、じっと俺の顔を覗き込んできた。
「……なんで、一生徒がお前の着替えを持ってくるんだよ?おかしいだろ、お前…何隠してる」
「……隠してなんかいない」
「隠してんだろ、どう考えたっておかしい。なぁ、お前信じてねぇわけじゃねぇけどよ」
学校に子ども預けてくれてる親御さんに、顔向け出来ねぇようなことしてねぇだろうな。
ギロ、と少し怒ったような目で見下ろしてくる同期を見上げ、俺はなんだか少し、笑えてきた。
「……あの破天荒で有名だったお前が、30にもなると流石に、それらしいこと言うようになったりするんだな」
「バカにすんな、破天荒の申し子の俺だってモラルくらいありますぅー!」
「…そうなると、モラルがねぇのは俺になるのか」
「は!?お前、おいまさか…!」
「…そんなわけねぇだろ」
尚も心配そうに見下ろしてくる同期に、ため息を吐く。
「…そんなんじゃねぇよ」
そう答えると、同期はようやく安心した様に、大げさにため息をついた。
問い詰めてくる同期の声を聞き流しながら、ぼんやりと、考える。
あいつは今日
独りで
夕飯を食べるのか