第14章 大好きなヒーロー
来たか!!と振り返ったオールマイトの視線の先を、緑谷も息絶え絶えに見上げた。
どこから撃たれたのかと周囲を見渡していた死柄木が、その視線を追って出入り口を見上げる。
「ごめんよ皆、遅くなったね。すぐ動ける者をかき集めて来た」
こじ開けられた出入り口から現れた、何人もの人影の方へと麗日と芦戸が駆け寄り、声をかける。
「飯田くん…!」
泣きそうになる麗日に、進み出てきた彼は、もう大丈夫だ、と声をかけた。
彼は、階段に座り込んだまま彼を見つめてくる向の元へと歩いて行き、手を差し伸べた。
『…ちょっと、待ちくたびれたよ』
「すまない、精進しよう」
皮肉を口にして、疲れた顔で笑いかけてくる彼女が手を伸ばす。
彼はその手を取り、助け起こした後、USJに響き渡るほどの大声で、名乗りをあげた。
「ーーー1-A、クラス委員長飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」
ずらりと並ぶ十数人ものプロヒーロー達の姿は、遠い広場から見上げても圧巻の眺めだ。
その景色を見た死柄木はひどくつまんなそうに呟いた。
「あーあ…来ちゃったな…ゲームオーバーだ。帰って出直すか黒霧」
勝手に始めて、勝手に終わらせようとした死柄木に、数発の銃弾が命中する。
直後、出入り口付近から、まだ意識があった13号がブラックホールを展開した。
血を流して倒れた死柄木をワープゲートで包み込む黒霧が、引きずられるように身体の自由を奪われていく。
「…今回は失敗だったけど…」
今度は殺すぞ、平和の象徴オールマイト。
静かに殺意を燻らせて、死柄木が呪いのような言葉をオールマイトに吐き捨てた。
ワープゲートが閉じられ、主犯格の2人は姿を消す。
「……何も…できなかった…」
両足の激痛に、叫び出しそうになるのを堪えながら、緑谷が呟いた。
「…そんなことはないさ」
銃弾と、ブラックホールによって引き起こされた土煙の中から、トゥルーフォームに戻っていくオールマイトが、緑谷の言葉を否定した。
「…あの数秒がなければ、私はやられていた…!」
また、助けられちゃったな。
なんて、オールマイトが優しい言葉をかけるから。
緑谷は、いよいよ涙を堪え切れなくなり、情けない泣き顔で、返事を返す。
「無事で…良かったです……!」