第14章 大好きなヒーロー
ショック吸収。
超再生。
希少な個性ばかりを選りすぐり、オールマイトを殺す為だけに作られた改人脳無は、彼との戦闘を始めて数十秒もしないうちUSJから殴り飛ばされた。
「衰えた…?嘘だろ、完全に気圧されたよ…よくも俺の脳無を……チートがぁ…!」
オールマイトに気迫負けし、生徒達に危害を加えることすら許されなかった死柄木はまた、自身の首を引っ掻き回す。
「全っ然弱ってないじゃないか!!あいつ…俺に嘘教えたのか!?」
「…どうした?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが…」
出来るものなら、してみろよ!!
尚も威圧感が増すオールマイトに、死柄木は呻きながら後退りをした。
「…さすがに、俺たちの出る幕じゃねぇみたいだな」
「緑谷!ここは退いた方がいいぜもう」
人質とかにされたらやべェし。
と言う切島の言葉は、緑谷の耳に届いていない。
ブツブツと何かを呟き続ける緑谷の様子に、立ち去ろうとしていた他の3人が顔を見合わせる。
「おい緑谷、聞こえてるか?主犯格はオールマイトが何とかしてくれる!俺たちは他の連中を助けにいくぞ」
「…緑谷」
轟が緑谷の肩に手を置くのと同時。
死柄木と、黒霧が駆け出し、オールマイトの方へと向かっていく。
「…っ!?」
その瞬間。
緑谷に置かれていたはずの轟の手が、強く宙へと弾き飛ばされた。
瞬きをした一瞬で、緑谷はさっきまで立っていた場所から跳び出し、黒霧へと殴りかかる。
風を切って跳びながら、緑谷は両足の激痛に叫び出しそうになるのを堪えていた。
(折れた!!さっきはうまくいったのに…!!でも!!!)
射程圏内に黒霧を捉えた。
痛みなんてどうだっていい。
自分だけがオールマイトのピンチを知っている。
自分だけが、彼を助けられる。
何物にも代え難い視線を、失ったことはある?
彼女の言葉で想像した。
憧れを失った自分のことを。
彼を守れなかったと、悔やみ続ける自分のことを。
「オールマイトから、離れろ!!!」
黒霧のワープゲートから、伸ばされた死柄木の手のひらが眼前に広がる。
それでも戦う意志は揺るがなかった。
額に触れられるその直前。
微かな銃声が響いた。
手を撃ち抜かれた死柄木はバランスを崩し、黒霧と共に跳び退き、距離を取る。