第3章 黒尾side
「っ!!!!!……黒尾かい?」
彼女の問いには答えずギュッと抱きしめる。
「久しぶりだねぇ、元気にしてたかい?」
黒尾
「あぁ…来てくれたんだな」
「お前が来いって言ったんだろ?」
黒尾
「そうだが…ほんとに来てくれるとは思わなかった」
「お前の願いならどこへでも飛んでいくさ。ふふ、背伸びたんじゃない?」
黒尾
「あぁ、だいぶ伸びたな。イケメンになっただろ?」
「そうだね、昔より男前になったよ。顔も中身も」
にこりと笑う彼女と俺の目線は合わない。なぜなら彼女は目が見えないから。
俺がどれだけ背が伸びたかなんてほんとは彼女にはわからない、顔がカッコよくなったこともわからない。
でもそれでも彼女は微笑んでくれる。俺がほしい言葉をくれる。
それだけで十分だった。