第1章 ファントムブラッド
ある日、ジョナサンといつも通り話した帰り道のこと。
目の前に、ディオが現れた。
面倒臭いな…と思いつつ、顔は感情を出さないように笑顔にする。
「あら、御機嫌よう。私に何か御用でも…?」
「ああ、少し君と話したくてね」
にっこりと笑うディオ。
きっと第三者から見たら、私たちは気持ち悪いだろうな。
どちらも嘘の笑顔で本心を隠して会話しているんだから。
「…それで、なんの御用ですの?私、早く帰らないとお父様とお母様に怒られてしまいます」
「俺が送るから平気だよ。まあ、もう遅いから早く終わらせようか………
お前、いつまでこの僕に本性を隠すつもりだ?」
ばれていたのか。
まあ、ジョナサンと同じ家で過ごしているこいつのことだからもっと早くばれてもおかしくはなかっただろうな。
「…なんのことでしょうか?」
「ジョナサンにはもっと男っぽい話し方をしていただろう?」
「まあ、ジョナサンは昔からのお友達ですから、言葉は少し荒れてしまっていたかもしれません。聞き苦しかったら申し訳ありませんでした」
「……チッ……。何故俺には本性を隠すんだ?」
今までは本性がばれたらめんどくさいということが理由だった。
だが、ばれた今もう関係ない。
「はっきり言いますと……私、あなたのような野心家が苦手なんです。周りの女性たちのように顔だけ見てあなたの目の奥の野心に気づかないような愚か者たちと一緒にしないでいただきたいですわ」
それだけ言って、私はなぜか動かないディオ・ブランドーを無視して家路へと向かった。
はぁ……これからは更にめんどくさいことになりそうだな、と明日以降の生活を想像しながら。