第1章
「リヴァイ、少しの間彼女を預かってくれないか」
そう言って部屋に入ってきたエルヴィンが、その逞しい腕に抱えていたのは、淡いピンク色のドレスを着た小柄な女性であった。
「・・・どういうことだ」
もともと寄っている眉間のシワをさらに深くして、リヴァイは怪訝な声を上げる。
しかし、その不満の声を気にすることもなく、エルヴィンは窓際に置いてある椅子に、至極丁寧に彼女を下ろすと、いそいそと彼女の服の乱れを直し始めた。
その広い背中の影から、エルヴィンにされるがままになっている彼女の姿を、リヴァイはチラリと伺う。
胸のあたりまで伸ばされた黒髪はサラサラと絹糸のように流れており、その肌はまるで陶器のようになめらかで、透けてしまいそうに白かった。服の下から伸びる手足は華奢で、今にも壊れてしまいそうな印象を受ける。細い首に乗った、小さな顔。滑らかな頬の上には、形の良い眉と、引き込まれそうに深いコバルトブルーの瞳があり、スラリと筋の通った形の良い鼻が顔全体のバランスを芸術的なまでに整えていた。
そして、うっすらと桜色に染まる唇。その口元は少しほころんで、美しい微笑をたたえていた。
まるで人形のように、もしかしたらこれほどまでに美しい人形はないのではないかと思われるほどに、彼女は美しかった。
もともと女性に必要以上の関心を持たない性質であるリヴァイですら、軽い酩酊を覚えるくらいだから、根っから女好きの男が彼女を見たらどうなるのだろうか。よだれを垂らして飛びつくだろうか。
いや、おそらく誰にもそんなことはできない。きっと、ただただその美しさに見とれ、言葉を失った木偶のように立ち尽くしてしまうはずだ。それほどまでに、彼女の美しさは尋常ではなかった。