【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第3章 秋霖 ②
「京香さんは木兎家に仕えて長いの?」
「私は生まれた時から木兎家に仕えることが決まっておりましたから、高等女学校を卒業してすぐにこちらに参りました。ですから、まだ2年でしょうか」
それでも京香は木兎家の家政婦長を務めるほどの人物。
立ち振る舞いは使用人というより上流階級の人間のそれで、“使用人の質をみればその家の質が分かる”とはよく言ったものだ。
「さすが、赤葦家の人間ね」
昨晩、夕食の後に京香を連れて部屋にやってきた赤葦。
“八重様の侍女を務めます、京香でございます。御用があればこの者に何なりとお申しつけください”
相変わらず淡々とした口調で話す家令の隣で、京香は八重に深々と頭を下げていた。
他の木兎家の女中と同じく、白と黒と黄土色が縞模様となっている着物を纏っているが、品のある顔立ちや仕草は他と一線を画す。
その理由は、赤葦の次の言葉ですぐに明らかとなった。
“京香は私の三つ上の姉であり、赤葦家の長女でございます。木兎家のしきたりや作法などは私よりも熟知しております故、何かあればこの者を御頼りください”
「京香さんと赤葦はあまり似ていないわね」
すると京香は八重を振り返り、クスクスと笑った。
常に冷ややかな赤葦と違い、姉の方は柔和な性格なのだろう。
「顔は似ていないかもしれませんが、頑固さは良く似ていると言われます」
「でも京香さんは優しいけれど、赤葦はなんていうか・・・冷たい感じがするもの」
丁寧だが温かみのない言動。
もちろん光太郎のように歓迎して欲しいわけではないが、彼からは拒絶されているようにすら思える。
「弟の態度がお気に障りましたら、どうかお許しくださいませ」
八重の言いたいことは百も承知なのだろう。
京香は主に向かって深々と頭を下げた。