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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




光太郎は子どもをあやすように八重を抱きながら、かつての両親の寝室をサンルームから眺めた。

光臣は厳しい父親だったが、息子に甘い一面も持っていた。
本来ならば息子でさえも入ってはいけない寝室に幼い光太郎を招き入れ、自分と日美子の間に寝かせることもあった。

だが、最後にこの部屋で光太郎が父と言葉を交わした時、親子として過ごした十八年という時間が全て崩れ去るような事実を聞かされた。


“私とお前は血が繋がっていない”


「ここで・・・この部屋で、父上は母上の遺品を箱にしまいながらそう言った」


隠居後の住まいに、日美子の遺品を一つ残さず持って行った光臣。
その中には光太郎と三人で取った写真もあった。


“それでも私の息子は光太郎、お前ただ一人だ”


直系の血にこだわるならば、光臣には八重を養女とする選択肢もあった。
しかし、それでは八重の夫に家督がいってしまう。
牛島侯爵家のように、娘の婿養子に爵位を譲る気はなかった。


「父上はその時、俺と赤葦に二つのことを言い残した」


一つは、まさに今ここに八重がいる理由。


「木兎貴光の娘、八重を木兎家で引き取ること。その娘が心身ともに健常であれば、光太郎の妻とすること」

明治政府が定めた民法では四親等、つまりイトコ同士の婚姻が認められている。
よって、戸籍上はともに光圀の孫である光太郎と八重は、夫婦となることが可能だった。

「八重が俺との子を産んでくれれば・・・木兎家の名と血筋の両方を守ることができる」

もし八重が他家に嫁いでしまったら、それは叶わない。
同世代の男に見初められることのないよう、八重にとって社交界デビューだった鹿鳴館の夜会で光太郎は彼女をエスコートし、できる限りそばを離れないようにしていた。










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