第3章 金平糖
一さんにも、隊士に稽古をつけたりするお仕事があるため、
お掃除は私が一人で引き受けた。
八木邸だけでよいとのことだったので、
一人でやるには大変だけどできないことはない。
廊下のすぐ隣に面している中庭に、素振りをする沖田さんの姿も見受けられた。
チラチラと見られている気配はあるものの気にしている暇などありもせず、掃き掃除に拭き掃除。
忙しく動いていた。
ーぐぅぅ…
「ぅっ…」
「ぷっ…」
「…笑わないでくださいませ!沖田さんっ!!」
一人でたくさん動いたら、そりゃお腹も減るもので…
何て言うのはいいわけで、
「お昼、あまり食べてなかったでしょ?」
「実は…豆腐が苦手なのです…」
「そういうことね。」
こっちにおいで、と手招きして縁側に座る沖田さん。
そっと着物を整えて隣に正座をすると、綺麗な顔立ちで微笑んでくれた。
「これ、食べていいよ。」
「わぁ…!」
そう言って差し出されたのは、
色とりどりの小さくて可愛らしい金平糖。
「いただきます。」
「どうぞ。」
一つ口に含めば甘い風味が広がっていった。