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恋桜

第2章 お豆腐


「失礼します。」

「へぇ…」

源さんに連れられて入ってきた少女は小柄であった。
キレイに結われた髪。
着物はとてもシンプルで水色一色のものに黄色の帯をしめていた。
どれだけシンプルでも彼女には似合ってしまうようで、
沖田は感心するように声をあげた。

幹部の円から少し離れたところにキレイに正座をして頭を下げる少女。

「あー。紹介する。妹の夏蓮だ。主に下女中の仕事をしてもらう。」

下女中とは、簡単に言うと水回りのお仕事をする人だ。

「ただし。お前らにもやってもらうぞ。この男所帯の中、女を一人で歩かせるわけにはいかねぇからな。毎日一人、担当して手伝ってやれ。」

いつもは数人が担当して家事をしていたが、これからは1日に一人炊事の担当になり夏蓮と行う、というのだ。
だが、それを否定する幹部はいなかった。
男所帯、それに納得しているから。
とはいえ、1日に一人、彼女の側には幹部がいるのかと苦笑いをする一同でもあった。
まるで用心棒だと。

そして土方の言葉はまだまだ、
長々と続くのであった。

「夏蓮。お前もよく聞いておけ。」

「はい。」

「こいつの外出を縛るつもりはねぇ。ただし、その日非番の隊士を必ず一人連れていかせることにする。そして、女中で働いてもらう以上、もちろん給金もでる。あまりやれねぇが。
ちなみに、こいつが非番の時は家事はこれまでのようにやってもらう。

それと、巡察に着いていくことは禁止する。
何かあってからじゃ遅いからな。

それから…」

「土方さん、それくらいでいいんじゃないですか?」

その長い言葉を遮ったのは言うまでもなく沖田だった。

幹部の表情は、皆一緒で呆れたような苦笑いを浮かべていた。

もちろん、理由はその溺愛ぶりにである。
その表情を見た土方は誤魔化すようにコホンと一つ咳をした。

「…まぁいい。夏蓮、何かあったらいつでも俺の部屋にこい。」

「ありがとうございます。兄さま!」

妹は妹で、兄の溺愛に気づいていないようで、
心のそこから感謝しているようだった。

そんな夏蓮に、嫌な想いを抱いたものは一人もいない。

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