第2章 【海水浴!ナンパだホイ!】菊丸英二/夢主
すっかり耳に残る波の音と、潮風に別れを告げて、ホームへと滑り込んだ電車に乗り込む。
この時間から電車に乗る人は他にいなくて、ふたりきりの車両、ボックス型の座席にふたり、横並びに座る。
聞こえなくなった波の音と潮の香りが名残惜しくて、窓の外に視線を向けるけれど、英二くんと私の顔が反射するだけで、外の景色は見ることが出来なくて・・・
「英二くん、また、連れてきてくださいね・・・?」
だけど返事は帰ってこなくて、変わりに聞こえてきたのは、スースーと耳元で聞こえる英二くんの規則正しい寝息・・・
「英二くん、疲れちゃいましたよね・・・」
席に座った途端、眠ってしまった英二くんが、発車の衝撃で私の肩にもたれかかる。
髪の毛でよく見えない寝顔を眺めながら、そっとその髪に触れる。
今日は英二くん、朝からすごく張り切ってくれて・・・
たくさんの荷物を用意してくれて、色々あったけど、頑張ってくれて・・・
「今日は、すごく楽しかったです・・・」
ふわりと、私も欠伸をひとつ・・・
確かに疲れたな・・・、そう思いながら、英二くんを起こさないようにそっとバッグから本を取り出す。
「着いたら、ちゃんと起こしますからね・・・?」
波の音に変わった電車の音と、英二くんの寝息を心地よく感じながら、この幸せな瞬間をそっと噛み締めた。
【海水浴!ナンパだホイ!】
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