第1章 上
まるで大切な宝物を扱うように優しく行われた行為の後、カラ松は私の身体を丁寧に拭き清めて、ベッドに寝かせてくれた。
そのまま横に寝転がってきたカラ松が、私の身体を優しく抱き寄せる。
「・・・大丈夫かい?」
一体何が大丈夫なものか、と思ったが、見下ろしてくる子犬のような顔を見たら、あぁこの人は本気でそう思っているのだな、と分かった。
「・・・初めてでしたが、それほど痛くありませんでした。カラ松さんが優しくしてくれたおかげだと思います」
「そうか、それは良かっ・・・・えっ?!」
がばっ、とカラ松が身体を飛び跳ねさせた。
「初めて・・・だったのか?」
「・・・・・まぁ」
「すまないっ!!初めてだったなんて!!痛くはなかったか?!あぁ、何てことだ!初めてだと知っていれば、もっともっと優しくしたのに!!」
「いえ、十分優しかったですよ」
「無理をさせてしまった・・・本当にすまない、君のことを誰よりも愛しているのに・・・」
心底申し訳なさそうに謝るカラ松。本当に何なのだろうか、この人物は。調子が狂うというか、ズレているというか。
確かに、処女相手にいきなり拘束プレイはやりすぎだと思う。だが、これはそういうプレイではなくて、私を監禁しようとしてのことなのではないか?
それに、なぜこんなに普通に話してしまっているのか。まるで、先ほどの食事の延長のようではないか。
この足かせさえ無ければ、めでたく結ばれたカップルの、事後のピロートークと何ら変わり無いではないか。
申し訳なさそうに私の腹を撫ぜていたカラ松だったが、何か閃いたような様子で、徐々にその表情が明るくなってきて、ついには自信満々の不敵な笑みが浮かんだ。
「だが・・・そうか、初めてだったのか・・・。俺は嬉しい!の初めてをもらえて、本当に嬉しいぞ!まさにディスティニー!!」
先程まで下がっていた眉が、今はキリリと上がり、大きな瞳は宝石のように輝いている。
先程から気になっていたが、このイタイ話し方が、カラ松の標準語のようだ。図書館で話している時には、微塵も感じさせなかったので、全く気がつかなかった。
とにもかくにもその日から、私はこの広い高層マンションの一室に監禁されている。