第8章 チョコより甘く
真っ赤な顔で目をウルウルとさせて抵抗するキミは、ホント、美味しそう。
食べないの?目だけでちょっと攻撃してみる。
「はい、アーンして?」
「···じゃあ、ちょっとだけ」
一向に引かない僕に勝てないと思ったのか、目を泳がせながらもその小さな口を開ける。
「どう?美味しいかな?」
まるで小動物のようにモグモグと口を動かしながら、小さくコクリと首を縦に振った。
「何度も試作したときより、今日のが一番ちゃんと美味しい、けど?」
「そう?じゃあ、その一番美味しく出来たのを僕がもっと美味しくしてあげるよ」
「どうい···んっ?!」
目を閉じる隙も与えず頭をかき寄せ、その甘い唇にキスを落とす。
僕の思った通り、キミの唇はとっても甘い。
「なんて顔してるのさ。キスくらい、今日が初めてじゃないデショ?」
「不意打ちズルいよ!」
「不意打ち?じゃ、ちゃんと宣言してからならいいワケ?それならご希望に答えないとね?···今から甘い時間を堪能しマース」
「ち、違う!待って月島君!」
また、月島君かよ。
「待てない。どうやらキミには、お仕置きが必要みたいだからね」
慌てながら僕の胸を押し返そうとするキミを抱き寄せ、その甘い唇に触れようとした瞬間···
ー たっだいま~!蛍、帰ってんの? ー
なんてタイミングで帰ってくるんだよ。
小さく舌打ちをして、スっと体を離しあたかも何もなかったかのように装う。
リビングのドアが開き、能天気に笑いながら顔を出す兄ちゃんに眉を寄せた。
明「蛍、帰ってるなら返事くらいしろって。あ、春華ちゃん、いらっしゃい!」
「お、お邪魔してます」
明「ん?なんか顔赤い?蛍、部屋が熱いんじゃないのか?」
「さぁね」
明「さぁね、って。あれ、春華ちゃんチョコついてるよ?ほら」
大胆にも兄ちゃんがキミの口元を指先でなぞり、こともあろうにその指をパクリと舐めた。
「明光君?!」
明「うぇ~い!女子高生の味がするぅ!」
···。
「ちょっと!用事がないならサッサと部屋でもどこでも行ってくれない?邪魔なんだけど」
あからさまにイラッとした顔を向けて、兄ちゃんに敵意を露わにする。
明「いいだろ?ちょっとくらいオレにも幸せ分けてくれよ?あ~、オレも春華ちゃんみたいなカワイイ彼女が欲しいなぁ」