第7章 HATE YOU
頬に湿布を貼った及川の横顔に、岩泉はため息をつく。
「お前って、本当にバカだよな」
「うるさい」
「どうにかなんねーの?その癖、
いい加減カッコわりぃぞ」
そう聞くと、及川は怪訝そうに鼻で息を吐いたが、
立ち止まって両手で頭を抱える。
「岩ちゃーーん…かっこ悪いついでに聞いてくれる?」
「おー」
「俺さぁ…
まだ、春華のこと…メチャクチャ好きなんだよね」
「お前の性格…ねじ曲がりすぎだろ」
好きな子ほど、虐めてしまうという悪い「癖」だ。
「あ゛ーーー、春華さぁ久しぶりに見たけど
めちゃくちゃ可愛くなってたー…し、チョコバー美味すぎた、
しかもさ、見てよビンタされちゃった!
怒ってる顔も可愛かったよね☆」
「……てかよ、お前が原因で別れたんじゃなかったか?」
及川はあの日のことを思い出す。
春華の悪口を言っている所を見られて、別れてしまった苦い思い出だ。
「…だって、国見ちゃんが春華のこと狙ってるって丸分かりだったから
悪口吹き込んでたら諦めるかなーって…
それに、及川さんが女の子にベタ惚れとかダサいじゃん!」
拗らせすぎている友人を、引いた目で見つめる岩泉。
まさかこんな風に思われているとは露ほどにも思っていない春華は「徹菌…死ね!しねー!」と、いつもより念入りに歯を磨いて眠りにつく。
春華史上最悪のバレンタインデーが幕を下ろした。
たぶんつづく