第5章 平行線
私はバッグの奥底にしまったチョコの存在を思い出して京治に渡した。
「あ、これ」
「え、」
京治は私がチョコを用意していたとは思わなかったのか驚いていた。でもすぐに笑ってありがと、と呟くのだった。
「でもポッキー、アーモンドクラッシュがよかったな」
「ちょ、文句言うなら返してよ」
「嘘だよ」
そう言って微笑むと京治は溜息をついて手を差し出すのだった。
「?」
私が訳がわからないと言う顔をすると京治は照れ臭そうに呟いた。
「えっと……守るから」
私はやっとその言葉の意味を理解した。
私はあの時のように、京治の手に私の手を重ねて握った。
「……ありがと」
小さく言った言葉は聞こえるか聞こえないかくらいの声だったのに京治はうん、と言った。
この先、もし結ばれることがなくても、きっと京治は私にとって、ずっと大切な人なんだと思う。
「あ、そうだ春華」
「何?」
「さっき、春華が言ってくれたじゃん。…あれ、俺もだから」
訳がわからずに首をかしげると京治は顔を真っ赤にして言うのだった。
「だから、俺も春華の事、大好きだよ。……ずっと、そばに居て」
本当は将来のことなんて想像もつかなかったし
考えてもなかったけれど
京治がそんなこと言うから
自分でも珍しく将来のことなんて考えてみたりして
その時もやっぱり私は京治の隣なんだろうな
なんて、他人事のように思ってみたりしたんだ
~fin~