第5章 平行線
「ごめんなさい。今気分が優れないの」
そう言ってチョコを受け取らないで男子生徒から逃げると今度は違う人からチョコを差し出された。
さっきと同じように逃げると、また違う人から差し出された。そんなことの繰り返しで気づいたら放課後。
「春華すごいモテてたじゃん。チョコ受け取ったの?」
奈津が戯けて笑って言う。
「逃げてきた。今日部活なくて良かった…。あったら部活後も大変だったよ」
「そうだね。あ、先生に呼び出されてるんだった!また明日ね!」
「うん。また明日」
そう言って帰路につくと京治と会った。
「「あ」」
何となく顔を合わせにくくて私は目を背けた。
「春華」
名前を呼ばれて振り向くと私は目を見開いた。
目の前にはポッキーが出されていたから。
私は声を上げた。
「…何で」
「…何でって、欲しかったんでしょ?大変だったよ死守するの。」
私は渡されたポッキーを見つめた。
やっぱり京治は優しい。
「この前はごめん。えっと、嫌いなんだっけ…俺のこと」
要らないかな、と不安そうに言う京治。
「……嫌い」
違う。嫌いなんかじゃない。大好きなのに、私の口からは天邪鬼な言葉が出た。
「え、嘘」
不覚にも慌てる京治が可愛いと思って、笑ってしまった。
「ふふっ、嘘。好き。大好き」
これが告白だなんて、京冶は思ってもないんだろうな。