第5章 平行線
"今、何考えてるか当てようか"
朝、晴れすぎた空に自分の声がやけに大きく響く。
「「腹減った」でしょ」
私は自分の幼馴染、赤葦京治の顔を覗き込んでいう。
「残念。正解は「菜の花辛子和え食べたい」だよ」
「ほぼ正解じゃん。朝から菜の花辛子和え…?」
いつも通りの道を歩きながら、いつも通りの何気ない会話をする。
こんな日々が、私は結構好きだったりする。
「京治って意外とよく食べるよね。縦にばっかり伸びるけど」
「そうかな。そういう春華も伸びたよね。何だっけ、170センチ?」
「…174センチ。人が気にしてることを…」
私は女子にしては高すぎる身長に日々悩まされていた。やっぱり女の子らしい方がいいし、京治と10センチも変わらないから。
「ごめんごめん。でも気にしすぎ」
そう言って軽く私の頭を叩く京治。
上手く纏められた髪が崩れるな、と思いつつも、自分より一回りや二回り大きな手で撫でられるのは嫌いじゃなかった。
「ね、京治。バレンタイン、今年もあげるからお返しにポッキー頂戴」
「何で?自分で買えばいいじゃん。春華のことだから金欠ってわけでもないんでしょ?」
何でって…。たしかにそうなんだけど、やっぱり好きな人から貰ったものって特別だと思う。
「…やっぱりいい」
「だってあんまり意味ないし…」
「……。」
私と京治は平行線。
近づきもしないし、離れもしない。
今までも、多分きっとこれから先もずっと。