第1章 1
一日に一粒ずつ食べることにしよう、と一人で満足げに頷き、ヴィンセントは箱に蓋をする。
器用に銀色のリボンを掛けて蝶結びをし、残った包装紙を畳んだ。
「え…えーと…こっちのはどうするの?」
リオがベッドの山を指すと、ヴィンセントは一瞥して首を傾げた。
「リオが食べるといい」
「え、えー……」
さすがにこの量のチョコレートを一人はきつい。
妬くどころの話ではなくなってきた。
「そうだな…四日目に残っていれば、手伝おう」
涼しい顔で付け足すヴィンセントに、リオは唖然とする。一瞬でチョコレートの山に興味を無くしたヴィンセントは、また銀色のリボンの箱に目を戻していた。
その眼差しが柔らかくて、嬉しいような、困ったような、何とも言えない気分になる。
「ええーー……」
リオは溜め息のような唸り声を洩らし、チョコの山から一つ目の包みを取り上げた。
end.