• テキストサイズ

【FF7 ヴィンセント BL】神の食べ物

第1章 1


「はい、じゃ、あ〜ん」
椅子に掛けるとリオがチョコレートの粒を摘んで突き出してきたので、ヴィンセントは素直に口を開いた。
逆なら解るが、珍しい、と思いつつ。
舌の上に落とされたチョコレートを口の中に仕舞うと、ほろりと溶け、濃厚なカカオの味の中から、仄かに甘酸っぱい香りが拡がった。
「………木苺か…」
悪くないな、と口の端が上がる。
甘過ぎず、洗練された逸品だった。
「おいしい?」
ああ、と頷き、ちらりとリオの手元に目を遣る。
誰から、と訊けばまた気を悪くするだろうか?
「リオが貰ったのか?」
一瞬視界に捉えた包装は上品な薄青、銀色のリボンが解かれていた。箱は正方形でさほど大きくはない。
おそらく、自分が受け取った中には無かった。
「ヴィンセントにだよ」
…いや、そんな筈は。
思わず箱に視線を戻すと、リオが素早くもう一粒を摘んで自分の口に入れ、あ、と思う間も無く、口付けてきた。
両頬に手を添えられ、口移しでチョコレートが送り込まれる。
溶けかけたそれは、リオの唾液に濡れ、先程よりも甘い。
「…僕から」
離れ際に微かな音を立て、リオはぺろりと自分の唇を舐めて笑った。少し頬が紅い。
愛おしさと木苺の香りに、ヴィンセントの口許は知らず綻んだ。
「そうか………ありがとう、リオ」

他のチョコレートを口にする前に、まず自分のを味わって欲しくて、なんだか恥ずかしいことをした気がする。
でも、まあいいか。
お蔭でヴィンセントの極上の微笑を見られた。
リオは満足してコーヒーを啜り、さてどれから開けようかとチョコレートの山を物色する。
ヴィンセントに目を遣ると、リオが贈ったチョコレートの箱(まだ三粒残っていた)を眺めながら、銀色のリボンを指で弄び、こちらを気にする風もなく時折コーヒーのカップに口をつけている。
「えっと…次、どれ食べる??」
リオが声を掛けると、ヴィンセントが顔を上げた。
「いや…、私は食べない。どれでもリオの好きなのを食べるといい」
あっさりと返された言葉に、リオは手を止める。
「え? ……それって、」
「私はこれしか食べたくない。そうだな…あと三日は」
/ 4ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp